そばとうどんの比率

ひさしぶりに駅の立ち食いそば屋に入る。空腹のところにそば屋から鰹と醤油のダシの濃い匂いが漂ってきて、ついさっきまで思っていた今晩は野菜炒めにしようかなどという意識は消し飛ぶ。天ぷらそばを注文する。食券には「そば・うどん」と書いてあって選択式になっているみたいだけど、この手の店でうどんを注文した記憶がない。そもそも外でうどんを食べるという選択肢が自分の意識にないことに気づく。まあ東京の人間はたいていそうだろう。そばをずるずるやっている最中に7人の客が入ってきたが、全員「そば」と注文する。そばとうどんの比率はどのくらいなのか、店のおばさんに尋ねてみる。

「そばとうどん、どっちのほうが多いの?」

「そば」

「もうぜんぜん?」

「そう、もうぜんぜん」

「10人中9人くらい?」

「もっとよ」

だそうである。デカルト先生も納得の明晰にして判明なお答え。かくして東京における「立ち食い」とは「そば」を意味するのであった。西のほうへ行くと駅の「立ち食い」が「うどん」になったり「たこ焼き」になったり「豚骨ラーメン」になったりするんだろうか。「皿うどん」だと発車時刻を気にしながら食べると舌に刺さりそうである。