亀田ブラザースとエリカ様


ラジオを聞きながら昼の部の成績をつける。ラジオは最初から最後までずっと亀田一家と沢尻エリカの批判だった。世の中をなめている、社会人とは言えない、育て方が悪い、ボクシングを穢したなどなど。でも、定時制高校には、ガラの悪さでは亀田ブラザースみたいなのも沢尻エリカみたいなのもうじゃうじゃいるぞ。ときどき亀田パパやエリカママみたいなのも職員室に乗り込んでくるし。ラジオを聴きながら、彼らへの批判はふたつの文脈に由来することに気づく。ひとつは、メディアへの露出の多いセレブリティーは、人格的にも優れていなければならないという偶像崇拝の心理。「世界戦を闘うほどのボクサーなのに」「スター女優なのに」と。でもさ、彼らはボクシングが強かったり、ルックスが良かったりする「だけ」の若者であって、メンタリティー定時制高校のぐれた生徒たちとなんらかわらない。批判する人たちはいったい彼らに何を求めているんだろう。むしろその偶像に抱いている幻想のほうが不気味だ。ボクサーはボクシングが強ければ、アイドル女優は見た目がかわいければ、それでべつにいいじゃない。彼らを相手に授業をしなきゃならないってわけでもないだろうし、ましてや一緒に暮らすわけでもないんだからさ。そんなに高邁な精神を求めてるのなら、ダルフールアフガニスタンの難民キャンプでボランティア活動をしてる人たちにもっと目を向けて彼らを支援すりゃいいじゃないか。もうひとつは、その偶像をつくるメディアのしくみで、偶像として祭り上げた後にはしごを外して貶める。話題になりさえすれば良いんだろう。そして賞味期限が切れたらさようなら、娯楽として消費するのみだ。ずいぶん陰険だなあ。ラジオを聴きながら「うぜえんだよ、ああン」と啖呵を切りたい気分になる。というわけで、亀田くんやエリカちゃんが大勢いる夜の部の授業へ行くことにする。本日のお題は「アメリ公民権運動」。