「津波は天罰」の石原発言


いちおう私の上司でもある東京都知事は、14日「津波は天罰」と発言し、その翌日に発言を撤回して謝罪した。

「大震災は天罰」「津波で我欲洗い落とせ」石原都知事

朝日新聞 2011年3月14日19時34分
 石原慎太郎東京都知事は14日、東日本大震災に関して、「日本人のアイデンティティーは我欲。この津波をうまく利用して我欲を1回洗い落とす必要がある。やっぱり天罰だと思う」と述べた。都内で報道陣に、大震災への国民の対応について感想を問われて答えた。
 発言の中で石原知事は「アメリカのアイデンティティーは自由。フランスは自由と博愛と平等。日本はそんなものはない。我欲だよ。物欲、金銭欲」と指摘した上で、「我欲に縛られて政治もポピュリズムでやっている。それを(津波で)一気に押し流す必要がある。積年たまった日本人の心のあかを」と話した。一方で「被災者の方々はかわいそうですよ」とも述べた。
 石原知事は最近、日本人の「我欲」が横行しているとの批判を繰り返している。


東日本大震災 石原知事「津波は天罰」

毎日新聞2011年3月14日 19時54分

 東京都の石原慎太郎知事は14日、東日本大震災に関連し「我欲に縛られ政治もポピュリズムでやっている。それが一気に押し流されて、この津波をうまく利用してだね、我欲を一回洗い落とす必要がある。積年たまった日本人の心のあかをね。これはやっぱり天罰だと思う。被災者の方々、かわいそうですよ」と発言した。蓮舫節電啓発担当相から節電への協力要請を東京都内で受けた後、記者団に語った。多くの犠牲者が出ている災害を「天罰」と表現したことが、被災者や国民の神経を逆なでするのは確実だ。
 石原氏は「天罰」発言の前段として「去年一番ショックだったのは、おじいさんが30年前に死んだのを隠して年金詐取する、こんな国民は世界中に日本人しかいない。日本人のアイデンティティーは我欲になっちゃった」と述べていた。また「残念ながら無能な内閣ができるとこういうことが起きる。(95年の阪神大震災の際の)村山内閣もそうだった」とも語った。【青木純】
 ◇石原氏「受け止め方の問題」
 「天罰」発言について石原氏は、14日夕に都庁で行った記者会見で「『被災された方には非常に耳障りな言葉に聞こえるかも』と(前置きで)言ったんじゃないですか」などと釈明したが、実際には発言していない。
 発言の真意については「日本に対する天罰ですよ。これをどう受け止めるかという受け止め方の問題なんですよ。大きな反省の一つのよすがになるんじゃないですか」と持論を展開。「それをしなかったら犠牲者たちは浮かばれないと思いますよ」と述べ、撤回しない考えを示した。【石川隆宣】


石原氏「撤回し、深くおわび」と謝罪 天罰発言

朝日新聞 2011年3月15日12時48分

 東京都の石原慎太郎知事は15日、東日本大震災に関して「やっぱり天罰だと思う」などと発言したことについて、「言葉が足りなかった。撤回し、深くおわびする」と述べ、謝罪した。
 石原知事の「天罰」発言に対しては、被災地・宮城県村井嘉浩知事がこの日、「塗炭の苦しみを味わっている被災者がいることを常に考え、おもんぱかった発言をして頂きたい」と不快感を示した。同日午前の災害対策本部会議の後、報道陣の質問に答えた。県内では、約31万人が避難生活を送っている。
 石原知事は14日、「日本人のアイデンティティーは我欲。この津波をうまく利用して我欲を1回洗い落とす必要がある。やっぱり天罰だと思う」と述べた。


津波は天罰」の発言が出た文脈には、昨年社会問題になった年金サギ事件をはじめとして国家への奉仕を顧みず、自己の利益のみを追求する近年の日本人のあり方への批判があるという。国家の利益こそ最優先されるべきという石原のような超国家主義者にとって、社会保障の抑制によって九州で餓死者が出た事件は「取るに足らないこと」と映っても、年金サギは「欲深い愚民によって国家が食い物にされているゆゆしき事態」と映るのだろう。「我欲を捨てろ」なんて仏教用語ふうの言葉を使っているが、要するに、すべての国民は国家利益のために滅私奉公せよという彼が日頃からくり返しているナチス的な政治信条をなぞっているにすぎない。そうした中でおきた今回の大地震津波は、彼が思うところの理想から遠く離れている日本社会に対する「天罰」であり、我欲を洗い流すための浄化作用なのだという。ここまでくると、独善を通りこして狂信的である。


コラムニストの町山智浩は、フロリダ在住の女性が日本の地震を「天罰」とくり返しながら神の王国について熱く語っているYouTubeの動画を紹介し、石原発言を批判している。彼女は言う。「神様は日本の肩をゆさぶって大地震を起こしたのよ、すばらしいことだわ、これこそ神の存在証明よ」。どれだけ人が死のうとそこで人々が体験したことに思いをめぐらせることはなく、自らの思想信条を補強するための材料として利用する。その点では、石原も彼女と変わらない。いやむしろ、一個人として発信している彼女よりも、公人として定例記者会見の場でそれを口にする石原のほうがより悪質である。
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20110315

*その後、町山智浩のブログによると、この女性の発言はネタ(世間を騒がして面白がるプラクティカル・ジョーク)と判明したとのこと。もっとも、本気の神がかりだとしても手の込んだいたずらだとしても、内容が内容だけに悪質な感じがします。


私の上司は次の選挙にも再び出馬するそうだ。今回の発言についてもメディアの取り上げ方は小さく、まあどうせ石原だしという調子で受け流されつつある。でも、管がもし同じことを言ったら彼の政治生命は完全に絶たれるはずだ。保守派は身内に甘すぎやしませんか。彼の支持者の皆さんはご存じないようだけど、都知事っていうのは偏狭な年寄りに好き放題言わせるための閑職ではなく、困ってる人たちに手をさしのべるために存在するパブリックサーバントなんだよ。