原子力損害賠償法


福島原発による被害総額は、現時点でも数兆円にのぼると見られている。復旧のめどもたたず、日々放射性物質を出しつづけているので、今後、被害総額もふくらみつづけるだろう。毎朝のNHKニュースで、1号機・2号機・3号機からもくもくと放射能まじりの水蒸気がたちのぼる様子は、すっかりおなじみの朝の風景になってしまった。NHKではなんの解説もなしにあの映像を放送しているが、東芝で原子炉の設計をしていた後藤政志さんの解説によると、あれは原子炉格納容器からの水蒸気だそうで、核燃料に直接触れていた水が強い放射能をおびたまま湯気になって出てきたものだという。いまは緊急事態なので、本来ならば絶対に開けてはいけない「ウェットウェルベント」という圧力抑制室にあるバルブを原子炉内の圧力を逃がすためにやむなく開けているとのこと。いっさい解説なしで、原子炉からもくもくと湯気の立ちのぼる様子を「いつもの朝の風景」として流すNHKもずいぶんと不親切である。高濃度の放射性物質が海に垂れ流しになっていたり、周囲の放射線が強すぎて復旧作業ができなくなったりするのが日常化しているので、映すほうも見るほうも感覚がマヒしてきているのかも知れない。


では、その数兆円にのぼると見られる被害をどのように賠償していくのか。原発事故の損害賠償について定めた法律に「原子力損害賠償法」というのがある。
→ 総務省法令検索「原子力損害の賠償に関する法律」


その第3条1項には、次のようにある。

原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りでない。


今回の地震津波が「異常に巨大な天災地変」にあたるとすれば、東京電力の賠償責任はすべて免除されるということになる。しかし、25日の記者会見で枝野は「安易に免責の措置が取られることは、この経緯と社会状況からあり得ない」という見解を示した。たしかに道義的責任と社会状況から、東京電力の責任がすべて免除されるというのは考えにくい。東京電力自身も日頃から、地震津波には万全の対策をとっているから事故がおきるなどありえないと自信満々で威張っていたんだから、地震津波くらいで原発が壊れるようなことがあっては困るのである。言ったからには責任とってもらおうというのが世論のすう勢であり、東京電力に同情する声はほとんどない。今回の事故が免責事項に該当するようなことはまずないだろう。


では、東京電力は損害賠償を支払うとして、その額はどれくらいなのか。同法の第7条1項によると原発一事業所あたり1200億円までだという。

損害賠償措置は、次条の規定の適用がある場合を除き、原子力損害賠償責任保険契約及び原子力損害賠償補償契約の締結若しくは供託であつて、その措置により、一工場若しくは一事業所当たり若しくは一原子力船当たり千二百億円(政令で定める原子炉の運転等については、千二百億円以内で政令で定める金額とする。以下「賠償措置額」という。)を原子力損害の賠償に充てることができるものとして文部科学大臣の承認を受けたもの又はこれらに相当する措置であつて文部科学大臣の承認を受けたものとする。


今回の事故は四基の原発からの放射能汚染なので、四事業所とみなされて4800億円になるのか、それとも福島第一原発全体で一事業所とみなされるのか。どこの新聞にも4800億円という数字は出てこないので、福島第一全体で一事業所とみなされるようだ。では、今回の福島原発事故では、1200億円が東京電力の支払う損害賠償の上限なのか。政府はそうではないという。これがこの法律のややこしいところで、文科省のWebサイトには次のように書いてある。

Q5.原子力事業者が賠償措置額である1200億円を支払い終わったら、それ以上は賠償はなされないのですか?
A5
原賠法では、万一原子力損害が発生した場合、原子力事業者は生じた原子力損害の全額を賠償する義務を負っています(無限責任主義)。
従って、1200億円を支払えばそれ以上は賠償請求に応じなくてもよいのではなくて、この1200億円は、万一原子力損害が発生した場合、被害者に対して迅速かつ確実に賠償の支払いを行うための保険に過ぎません。1200億円を超える損害額については、自らの財力をもって支払う義務が残ります。

なお、事業者の財力等から見て必要があれば、国が必要な援助を行うことが可能となっており、被害者の保護に遺漏がないよう措置されています(問6参照)。
http://www.mext.go.jp/a_menu/anzenkakuho/faq/1261358.htm


上の文科省の解説によると、1200億円というのはあくまで保険金の上限額のことを指している。つまり、自動車の自賠責保険のように、電力会社は最大で1200億円支払ってもらえる事故保険に加入して、万が一の事故のときには、すみやかに損害賠償ができるようそなえておかなきゃダメだよというわけである。同法第8条では、その事故保険契約を次のように定めている。

原子力損害賠償責任保険契約(以下「責任保険契約」という。)は、原子力事業者の原子力損害の賠償の責任が発生した場合において、一定の事由による原子力損害を原子力事業者が賠償することにより生ずる損失を保険者(保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第四項に規定する損害保険会社又は同条第九項に規定する外国損害保険会社等で、責任保険の引受けを行う者に限る。以下同じ。)がうめることを約し、保険契約者が保険者に保険料を支払うことを約する契約とする。


今回は被害規模の大きさから、間違いなく満額の請求になるので、保険会社のほうも大変である。今後、原発の事故保険は大幅に掛け金が値上がりするだろう。では、電力会社は保険金のおりる1200億円以内で賠償すればそれでいいのか。上の文科省の解説によると、そうではなく、電力会社は、事故を起こした場合には「無限責任」を負うのだという。つまり、保険金の上限額1200億円とは関係なく、あくまで被害総額のすべてを電力会社が負担するのが原則だという。今回の原発事故ように被害総額が数兆円におよぶ大惨事をもたらした場合、保険のおりる1200億円ぐらいではまるで焼け石に水なので、こういうときには、東京電力の資産をたたき売ってでもとにかく全額賠償しろということになる。政府が援助するのは、それでも賠償金が足りなくて、被害者が救済できず、電力会社もつぶれてしまいそうな場合に限られるというのが政府側の解釈である。


ところが、もう一方の電力会社側の解釈はまったく異なる。電気事業連合会のWebサイトには、次のように書いてある。

よくあるご質問
事故が発生した場合の損害を誰が補償するのか?賠償額は無制限なのか?

わが国では、原子力発電所の運転などにより原子力損害が生じた場合、原子力事業者がその損害を賠償することが、法律(「原子力損害の賠償に関する法律」)で定められています。
このため、原子力事業者は、同法に基づき損害賠償措置として、保険会社と「原子力損害賠償責任保険契約」を、政府と「原子力損害賠償補償契約」を締結しており、いずれも賠償措置額は600億円以内となっています。
600億円を超える大規模な原子力損害が生じた場合、政府が損害の規模等を考慮し、国会の議決を経たうえで補助金交付などの援助を行うこととなっています。
ただし、異常に巨大な天災地変又は戦争などの社会的動乱による原子力損害に対しては、政府が直接被災者の救済を行うなど必要な措置を講ずることとなっています。
http://www.fepc.or.jp/faq/1189681_1457.html


原発事故で支払うのは600億円までだという。なんで1200億円より安いんだろうと思ったら、これはデーターが古くて、平成21年に法律が改定されて600億円から1200億円に引き上げられたというだけのことだった。つまり、電力会社が損害賠償を負担するのは保険金のおりる分の1200億円だけで、被害総額がそれをこえても電力会社の自己負担はいっさいなし、あとは政府のほうで払ってねというのが電力会社側の解釈である。今回のケースに当てはめると保険のおりる1200億円までは損害賠償に応じるけど、あとの数兆円は政府が国会と話し合って何とかしてねということになる。ずいぶんとまた都合のいい解釈である。自動車事故だって事故をおこしたドライバーが損害賠償を全額負担するっていうのに。この電力会社側の解釈は、「原発事故は電力会社が無限責任を負うのが原則なんだから、とにかくなにがなんでも全部負担しろ」という政府側の解釈とはまったく逆である。法律が意図的にあいまいにつくられているとしか思えない。


では、このように両者の解釈が大きく食い違ったまま、今回の福島のような大惨事が起きてしまった場合はどうなるのか。もちろん答えは簡単で、立場の強い側の言い分が通るのである。以下、本日の朝日新聞より、東電会長一問一答の抜粋。

 ――現在の東電の姿で存続できるか。

 「1〜4号機が収束を含めてどういうふうに落ち着くか、損害賠償についても我々がどの程度救済されるのか、わからない。一言で言えば、非常に厳しい」

 ――補償の資金はどうやって調達するのか。

 「資金の問題は、おかげさまで2兆円を金融業界から確保した。ただし、この部分は原油が(1バレル=)100ドルとなれば、燃料代にかかる。今後の復旧費もかかる。いくらあっても足りない状況だ。こうした点も政府と協議しながら、何とか資金不足に陥らないよう努力する」
http://www.asahi.com/business/update/0331/TKY201103300554_02.html


東京電力はすでに賠償金として2兆円を用意したという。あるところにはあるものである。きっと政府側から、なにがなんでもきっちり払ってもらわないと東京電力を国有化して資産を切り売りするぞくらいのことを言われたんだろう。おかげで東電社長はめまいをおこして入院してしまった。政府側としては、震災対策で莫大な出費を余儀なくされているので、原発事故の賠償については東京電力のほうですべてカタをつけてもらわないとやってられないというところだろう。ただし、東電会長は一問一答の中で、原子力損害賠償法について、政府側との解釈のちがいがあることをくり返しほのめかしている。

 ――原子力損害賠償法に基づいて被害者への賠償をするというが、東電の負担はどうなるのか。
 「原子力損害賠償法は、免責についても、(賠償費用の負担をめぐる)スキームもはっきりしていない。政府がこれからどのように具体的に制定するかによるところが大きいと考えている」
 ――補償などにより、東電が債務超過に陥る可能性はどうか。そうなっても補償を優先するのか。
 「東電の今後については、重要な要因が分からないことが多い。最大限の補償、おわびをしたいが、全体としては法の枠組みのなかで政府と考えていきたい」
 ――補償の範囲はどうなると考えるのか。
 「法がどうなるのか、政府とよく協議しながら考えていく」
http://www.asahi.com/business/update/0331/TKY201103300554_01.html


「免責についてもスキームもはっきりしていない」「法の枠組みのなかで政府と考えていきたい」「法がどうなるのか政府とよく協議しながら考えていく」と東電会長は、損害賠償について奥歯に物の挟まったような発言をくり返している。すんなりと「無限責任」を受け入れるつもりはないらしい。とりあえず2兆円は確保したが、福島原発自体にも対策費用が湯水のようにかかるし、損害賠償にどれだけまわすかどうかは、今後の政府との交渉次第というところのようだ。一方、首相の菅直人は記者会見でも「国有化を検討中」と語り、東京電力への圧力を強めている。以下、これも本日の朝日新聞より。

菅首相原発新増設の見直し検討 東電存廃も議論へ

 菅直人首相は31日、記者会見を開き、原子力発電所新増設を盛り込んだ政府のエネルギー基本計画の見直しを検討する意向を表明した。東京電力福島第一原発の事故にめどがついた段階で、同社の存廃を含む国内電力会社のあり方を議論する姿勢も示した。

 首相は同日、サルコジ仏大統領と首相官邸で会談し、原子力政策を中心に意見を交換。その後、サルコジ氏と共同会見した。

 首相は「原子力、エネルギー政策は(今回の)事故の検証を踏まえ、改めて議論する必要がある」と指摘した。これに先立ち、首相は志位和夫共産党委員長と会談。志位氏によると、首相は原発の新増設について「見直しを含めて検討したい」と述べたという。

 また、電力会社の将来像について、首相は会見で「今後の電力会社のあり方も存続の可能性も含めてどうした形になるのか、議論が必要だ」と強調。東電の責任問題のほか、電力事業をすべて民間に委ねることの是非も検討する意向だ。

 政府は昨年6月に閣議決定したエネルギー基本計画で、現在54基ある原発を2030年までに14基以上増やすと決定。うち2基は建設中だ。ただ、今回の事故で原発に対する国民の信頼は失墜し、政府内でも「計画の見直しは避けられない」(経済産業省幹部)との声がある。民主党がまとめた復興基本法案原案でも「国は原子力に依存したエネルギー政策を見直し、安全で安定したエネルギー供給の確保について検討すること」との一文が盛り込まれた。
http://www.asahi.com/politics/update/0331/TKY201103310499.html


どうやら原発政策自体についても政治的判断によって、脱原発の方向へ大きく舵を切ることになりそうだ。ふだんなら原発ロビイストがだまってないだろうが、原発事故が深刻化する中、大声を上げて反発するのは世論を敵に回すことになる。自民党も長年にわたってとり続けてきた原発推進の方針を今回の事故を期に改めることにしたので、電力業界としても支援は期待できない。表だって原発推進をとなえるのはきわめて難しい状況で、もはやひとにぎりの狂信的な原発支持者くらいしか賛同してくれないだろう。ただし、今後、電力会社や財界との関係の深い経産省財務省の官僚が巻き返してくる可能性もあるので、政府の動向には注意しておく必要がある。


今回の事故をきっかけに原発の安全基準が見直され、今後、電力会社が設備投資に迫られるのは確実な状況である。事故保険の掛け金も大幅に値上がりするだろう。次の法改定では事故保険の額自体も1200億円から大幅に引き上げられるだろうし、それにともなって掛け金はさらに値上げされるはずである。近隣住民の目もいっそうきびしくなり、その対応にもせまられるだろう。そうなると、これから先、原発は電力会社にとっても「うまみ」のある事業ではなくなっていく可能性が高い。電力会社にとって原発は商品であり、社会正義でも信念でもなく、たんに儲かるからやっていたにすぎない。電力会社のコマーシャルが「原子力発電は安全でクリーン」とくり返しアピールしていたのも、それが大きな利益を生み出す事業だったからだ。もしも今回の福島原発の事故で、すべての損害賠償を東京電力側が「無限責任」として全額負担させられることになれば、原発事業は電力会社にとっても、そのリスクの大きさを背負いきれないと認識するだろう。福島原発の損害賠償のあり方しだいによって、今後、電力各社の側から原発事業を敬遠するようになることもあり得る。そういう意味で、政府と東京電力原子力損害賠償法をどのように解釈し、損害賠償をどのように負担するのかは、今後の原発のあり方を大きく左右するポイントになる。なんだ結局カネかよという気もするが、電力会社にとっての原発はあくまで利益を上げるための事業なので、原子力エネルギーに夢をいだいている研究者たちとは、根本的に立場が異なる。


たしかに原発が事故をおこす確率はきわめて小さい。数万分の一、数億分の一という確率だろう。しかし、いったん大惨事になってしまうと今回の福島のケースのように、巨大な電力会社がひっくり返ってしまうほどの莫大な損失を社会にもたらす。さらに、人々の不安、住み慣れた暮らしを失うことの悲しみ、長期にわたる健康被害、連続的に広がる環境の汚染といったお金に換算しにくい被害もふくめるとその損失は計り知れない。そういう限りなくゼロに近く、同時に限りなく無限に近いリスクというのは、あまりにも特殊であり、確率論でリスクを算定するのは不可能に思える。「限りなくゼロに近い確率」という点から考えれば、巨大隕石が落ちてくるのといっしょで、そんなことを心配しても意味がないとなるし、逆に「限りなく無限に近い被害」という点から考えれば、自ら責任を負えないほどのカタストロフィを社会の中に組み込むのは、あまりにも無責任だということになる。前者を根拠とする者は「道を歩いていてクルマにはねられる確率のほうがずっと高い」と言い、後者を根拠とする者は「チェルノブイリの被害の深刻さを見ろ」と言う。どちらも事実だが、両者の主張は考え方の出発点がまったくちがう所にあるので、いくら議論しても話はかみあわない。そうして月日は流れ、とうとう福島原発の大惨事がおきてしまった。今後、福島がチェルノブイリのような事態に陥った場合、もう環境を元に戻すのは誰にも不可能であり、とうてい電力会社一社でその損害賠償を背負うことなどできるはずがない。そういう算定不能なリスクをかかえた装置が社会の中に組み込まれ、人々の暮らしや経済活動がまわっているという状態は、あまりにも暴力的な社会のあり方に見える。


原発は運用するにしても、リスクを分散させるにしても、国家事業でなければ成り立たない巨大な社会装置である。だから原発の運用には、常に国家主義的な性質を内包しており、その是非をめぐる議論はたんなる技術論をこえて社会問題化する。そうした傾向は日本に限らず欧米でも同じである。いったん稼働をはじめた原発は、賛成・反対にかかわらず、誰もがそのリスクと責任を背負わされることになるからだ。その巨大な社会装置は、自治の尊重と人々の自律的な判断という民主主義の基本原理とはきわめて相性が悪い。


今日は、日本が長年続けてきたそういう社会のあり方がようやく転換点をむかえた一日だったように見える。ただ、その転換が人々の自律的な選択によってなされるのではなく、巨大事故によってなしくずしになされるというのは、いかにも日本的な社会のあり方だ。なんだか「時の流れに身をまかせ」か「ケセラセラ」のメロディが聞こえてきそうである。


*追記4/9

損害賠償をめぐる政府と東京電力との交渉をめぐって、4/5に海江田経済産業相が記者会見で、四月中に東京電力が住民や農家に対して賠償金の仮払いを行うとコメントしたところ、同日、東京電力側から、賠償金の仮払いについては承知していないというプレス発表があった。東京電力のプレスリリースは、原発事故を謝罪しつつも、その一方で仮払いについては、「当社としては承知しておりません」「まだ決定しておりません」と強く否定している。「仮払い」といってもかなり大きな額になるので、政府の指示に対して、東京電力側が強く抵抗しているものと見られる。

東電、4月中に漏えい事故賠償金仮払い

 海江田経済産業相は5日の閣議後記者会見で、東京電力が、福島第一原子力発電所放射性物質漏えい事故で避難した住民や農産物の被害を受けた農家に対し、4月中に賠償金の仮払いを行う方向であることを明らかにした。

 経産相は、「具体的な支払い準備を東電に指示した」ことを表明した。仮払いの額については、「今後の賠償の内金としてある程度、まとまったお金を支給すべきだ」と強調した。4月中の支給については、「すべての人に行き渡るわけではないが、そういう日程感だ」と述べた。

 また、玄葉国家戦略相も「東電からの仮払いを含め、着の身着のまま避難された方に一刻も早い一時金の支給が必要だ」と作業を急ぐべきだとの認識を示した。枝野官房長官も「東電には補償を指示しており、当座の資金として緊急性を持って検討を進めていただいている」と述べた。原発事故による被害補償は、政府が設置する紛争審査会がまとめる補償の指針に基づき、電力会社が対応する仕組みだ。政府は週内にも審査会を設置する方向だ。

(2011年4月5日13時40分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110405-OYT1T00496.htm

TEPCOニュース 当社関連報道について

4月5日付読売新聞「東電、賠償金仮払いへ」について
平成23年4月5日
東京電力株式会社

 本日、「東電、賠償金仮払いへ」として、一部報道機関による報道がなされましたが、当社が公表したものではなく、当社としては承知しておりません。

 このたびの放射性物質の放出に関わる様々な原子力損害への対応につきましては、国の支援をいただきながら、原子力損害賠償制度に基づき、誠意を持って補償に向けた準備を進めているところですが、その具体的な内容につきましては、まだ決定しておりません。

 このたびの原子力発電所にかかわる事故により、広く社会の皆さまに大変なご迷惑とご心配をおかけしていることを、心より深くお詫び申し上げます。

以 上
http://www.tepco.co.jp/cc/kanren/11040501-j.html


福島原発の損害賠償の指針は、4/12からはじまる「原子力損害賠償紛争審査会」で策定されることになる。

福島第1原発:賠償紛争審査会「12日にも設置」 文科相
 東京電力福島第1原発事故の被害賠償について、高木義明文部科学相は8日、原子力損害賠償法に基づき、東京電力が被害者の損害を賠償する際の指針を策定する「原子力損害賠償紛争審査会」を12日にも設置したいとの意向を表明した。審査会が設置されれば、99年のJCO臨界事故以来2回目。

 高木文科相は「避難が長期化し、(農作物などに)風評被害も出ている。適切な賠償が必要だ。速やかに手を打っていく必要がある」と述べ、次の閣議が開かれる12日にも設置を目指す考えを示した。人選については、原子力工学や法律の専門家だけでなく、「農林水産業の被害補償に詳しい人にも参画してもらいたい」と述べた。【西川拓】
毎日新聞 2011年4月8日
http://mainichi.jp/select/biz/news/20110409k0000m020068000c.html


原子力損害賠償紛争審査会の役割について、文科省のWebサイトより。

Q9.原子力損害かどうかの認定は誰が行うのですか?
A9
原子力損害かどうかの認定は、賠償が加害者である原子力事業者と被害者との間の示談で行われる場合は、当事者同士で行うこととなります。
当事者同士の話合いでは解決しない場合は、原子力損害賠償紛争審査会に和解の仲介を申し出ることができます。原子力損害賠償紛争審査会は、原子力損害の賠償に関して紛争が生じた場合に文部科学省に臨時的に設置される機関で、紛争に関する和解の仲介及び原子力損害の範囲の判定等に関する一般的な指針の策定に関する事務を行っています。ただし、原子力損害賠償紛争審査会は、あくまでも和解の仲介機関であって認定の内容を強制することはできません。

被害者はまた、裁判所に訴えることもできます。この場合は、原子力損害かどうかの認定は、裁判所において行われることになります。
http://www.mext.go.jp/a_menu/anzenkakuho/faq/1261363.htm


*追記4/13


日経新聞でも、この損害賠償と東電の財務状況の視点から今回の原発事故を解説しています。記事では、詳細な財務状況が示されていますが、その趣旨はこの文章と同じで、原発のもつリスクの大きさと非経済性を電力会社が背負いきれなくなっているというものです。


日本経済新聞4/12 東電の悪夢、問われる原発の合理性 吹き飛んだ2兆7000億円弱