原子力エネルギーポスター展 これからもずうっと、原子力


このご時世に電力会社や外郭団体が制作した原子力PRポスターを見るとなかなかぐっとくるものがあります。ネット上にあるそうしたぐっとくるポスターを集めてみました。なんといっても原子力エネルギー推進のPRは、政府だけで毎年70億円、電力会社や外郭団体もふくめると毎年数百億円の一大産業なので、PRポスターも力作がそろってます。ましてやこういうご時世だとひときわ強いメッセージを発しているように見えるはずです。


【A.商業作品の部】
当サイトの「金賞」はダントツで日本電機工業会(JEMA)が2006年に制作した「これからもずうっと、原子力」です。キャッチコピーのきわだったインパクトの強さが高く評価されました。心の急所に突き刺さります。ポスターを制作された方、当サイトまでご一報いただければ、ささやかな表彰状を進呈します。



次点はこの「We need 原子力。」。「We」とはいったい何者かが気になるところですが、ここは素直にポスターの主体であるJEMAに加盟している原発受益各社と受け止めるべきでしょう。JEMAは原発プラントをはじめとした発電機材の製造・設置を行っている企業がつくった団体で、日立、東芝三菱電機パナソニックなどの大手電機メーカーが正会員として加盟しています。原発以外の発電機材も製造・設置しているようですが、さかんにPR活動をしているのは原発事業だけ。この点は電力会社といっしょです。もっとも、このポスターを不特定多数の人へ向けたメッセージととらえると、「We need 原子力」と原発受益者から言われても、よっぽど儲かるのねとしか受けとめられないでしょうから、キャッチコピーはあけすけすぎて少々難ありという感じがします。



JEMAのポスターはいずれもデザインのクオリティーが高いのが特徴で、ずいぶんお金をかけてつくっているんじゃないかと思います。JEMAのWebサイトによると、2010年からは美術系大学の学生を対象にデザインコンペも行っているとのことで、このポスターシリーズへの力の入れようが伝わってきます。今回の福島原発の事故をきっかけに、電力会社のほうは原発推進広告を早々にネット上から削除してしまいましたが、JEMAのポスターはそのほとんどをWebサイトで見ることができます。








というわけで電力各社による原子力推進ポスターは、残念ながらほとんどが消えてしまっていて見つかりませんでした。かろうじて見つかったのは四国電力による「プルサーマル」のPRポスター。この横長の判型は電車のつり広告向けに制作されたものでしょうか。プルトニウムをウランといっしょに核分裂させて、ひまわりのような大輪の花を咲かせようという未来への希望が表現されてます。手書きふうの書体でプルサーマルへの親しみやすさも表現しているようです。




プルサーマル」の広告は、NHKのメージャーリーグ中継にも登場。こちらの広告主は電気事業連合会。試合は2009年のワールドシリーズで、こういう大きな試合になると電事連の広告がしばしば表示されます。2009年のワールドシリーズでは、シリーズを通して「プルサーマル」の広告が画面に表示されていました。アメリカのプロ野球なのになぜ電事連の広告が表示されるんだろうと不思議に思いましたが、これは日本向けの映像配信に限ってコンピューター合成で広告が差し込まれるしくみになっていて、スタジアムにいる人にはただのグリーンバックに見えるようです。こういう電子式の広告板でないときには、看板そのものにも日本からの広告が表示されることもあります。メジャーリーグの大きな試合はNHKがきまって全国中継をするので、それを見越しての広告枠買い取りのようです。






次は毎年五月に行われている「原子力エネルギー安全月間」のポスター。1986年のチェルノブイリ原発事故をきっかけに、その翌年から安全キャンペーンがはじまりました。主体になっているのは経済産業省に所属する原子力安全・保安院。今回の事故でイタチ顔のかつらのおじさんとともに一躍知られるようになったテクノクラート集団ですが、原発推進の旗振り役である経済産業省の中に置かれた原発管理部門ということで、「原発推進に差し障りのない程度に安全管理する」という奇妙な立場に置かれてきました。その身動きのとれない状況を反映して、「五月が安全月間」というのも「原発の安全管理を徹底するキャンペーン」としてではなく、「原発の安全性を強く訴えるキャンペーン」としてメッセージを発信しています。そんなに安全ならアンタらいらないじゃないという気がするんですが、実際のところ、そのカフカの城で日々なにが行われていたのか気になるところです。ポスターのデザインのほうはいかにも政府広報という感じでJEMAほど垢抜けてはいません。原子力安全・保安院のWebサイトからは、残念ながらすでに大きな画像はなくなっていました。




電気事業連合会による核廃棄物の処分についての冊子の表紙。電事連や電力会社のパンフレントやチラシに描かれる人たちは、なぜかきまって満面の笑顔です。きっとみんな核廃棄物が大好きなんだと思います。



茨城県東海村が主催した原子力体験フェアーの告知ポスター。ビートたけしのおにいさんもゲスト出演。噺家さんの原子力問答が気になります。



【B.こどもの作品の部】
こどもを対象にした原子力推進ポスターのコンクールも、文科省・電力会社・経済団体など様々な組織が主催しており、こちらも質・量ともに充実しています。どこかの国の思想教育みたいですが、どこの国でもこどもたちはおとなたちの期待に応えようとするものです。プロの商業作品とちがって、書き手の思いがストレートに表現されています。学校の先生が図工の授業で原発反対のポスターをこどもたちに描かせたら、思想教育をおこなったということで懲戒処分の対象になりますが、元締めの文科省原発推進の側からこどもたちにポスターを描かせるぶんにはかまわないようです。










商業ポスターのほうはどんなにもっともらしいことを言っていても「原発受益者の言いぶん」にすぎないので、そのぐっとくる感じに大いに笑えるわけですが、こどもたちの描いたポスターのほうは、お金の臭いがしないぶん、見ているとだんだんしんどくなってきます。これを見てブラックな笑いを抱くのか、その背後にあるおとなたちの思惑に憤るのか、見る側の純情さが試されているような気がします。というわけで、純情な当サイトとしては、こどもの部の作品選考はひかえさせていただきます。