募金について


ちなみに混沌としたこちら側の世界では、被災地のために首都圏から送電するなんて立派な社会システムは確立されていないので、いくら節電したって被災地支援にはならない。それこそ自慰行為である。被災地支援は、まず募金、それから健康で技能があって時間の都合のつく人はボランティアへの参加ということになる。ともかく募金が一番手っ取り早くて効果的である。ただ、募金をする場合、日赤や新聞社のような規模の大きなものから、小規模のNPOまで様々な団体があって、どこに募金すればいいのか迷っている人も多いと思う。おおざっぱに特徴をあげると次のようになる。


日赤や新聞社のような規模の大きい組織の場合、義援金サギのようなことは考えられないのでなんといっても安心である。また、振り込みをする場合でも手数料の百数十円をまけてもらえるし、一万円以上募金した場合、振込用紙をとっておけば税控除の対象にもなる。世の中には節税対策として寄付をしてるという大金持ちもいるらしいので、そういう人は「ふるさと基金」のような自治体系のものへ募金するとさらに全額税控除される。もっとも、節税対策のためにあえて「ふるさと基金」に募金するのなら、住民税をたくさん払っているのとかわらない気がするんだけど。まあ、節税対策で募金する人のことなんかどうでもいいですね。


ただし、大きな組織の場合、動きが鈍いことが欠点である。政府の承認を待って厳正に分配することになるので、被災地の人へとどくまでに半年くらいかかってしまう。いま募金しても被災地にとどくのは秋になってからである。いますぐ被災地にとどけたいという人は、もっと小回りのきく小さなNPO団体に募金したほうがいい。また、被災地全体に公平にいきわたるよう分配されるので、特定分野や特定の人たちを重点的に支援するという融通もきかない。


一方、小さなNPO団体の場合、規模の小ささを逆に生かして、特定分野に対象を絞ってきめこまかい活動をしている。小回りがきくので募金が被災地にとどくのもはやい。なるべくはやく被災地の人たちへ募金を届けたい人や特定分野を重点的に支援したい人は、そういう分野で積極的に活動しているNPOに募金するといいと思う。


ただし、小さなNPOは玉石混淆なので、募金する団体の活動実績や評判にはよく注意する必要がある。熱心に震災支援活動をしているボランティアのエキスパートのような団体もあれば、よくわからないところへお金が消えてしまう義援金サギのような団体もある。活動内容や政治的スタンスも様々で、医療分野や障害者支援を専門にしているところもあれば、建設分野で活動しているところもあるし、政治色の強い団体もあれば宗教系の団体もある。小さなNPOに募金する場合は、そうした団体の背景や活動内容をよく調べてからにしないと後々後悔することになる。それがわからない場合は、日赤のような大きな組織に募金したほうが確実である。


また、各家庭を訪問しながら募金を集めているような団体は、はっきりと拒否するべきである。募金はこちらから能動的に行うもので、訪問者に気圧されて渋々するようなものではない。押し売りのような募金集めは活動内容以前の問題である。当然、活動内容のほうも募金サギかあやしげな宗教団体だと思ったほうがいい。もしそういう訪問があったら、「お断りします、募金はこちらから能動的にするものです、お引き取りください」とはっきりと断りましょう。募金は自分から能動的に行うものだと自覚していれば、「あなたはなにもしないんですか!」とこちらに罪悪感を植えつけて、お金を集めようとする相手にも、つけ込まれたりしないはずです。


あと、小さなNPOに送金する場合には振り込み手数料が百数十円かかる。まあ振り込み手数料は銀行や郵便局が判断するものだから仕方ないかな。税控除については、特定NPO法人として国から認定を受けている団体へ一万円以上募金した場合、確定申告の際に控除されるので、振込用紙をとっておくといいと思います。


最後に、個人的にはこういう募金は匿名でやるのがスマートだと思う。あちら側の世界では、誰それがいくら出したなんてことが話題になっているけど、さすが中身は空っぽ、じゃなくって、人目を気にする人気稼業。でも、募金なんて人目を気にしてするものではない。あくまで自らの能動的な意志でやるべきものなので、いくら募金しようと自分の胸の中だけにしまっておけばいいことだ。ましてや、誰がいくら募金したかなんて下種の勘ぐりってもんです。