iPhone 15 Pro 159800円

 モデルチェンジする度に値段がどんどん上がっていくiPhone。とうとう16万円だそうだ。高校生たちにiPhoneを使っているか聞いてみたところ、クラスの半数がiPhoneユーザーだった。日本は世界で最もiPhoneのシェア率が高いとよく言われているが、どうやら本当らしい。一方、日本の平均所得はこの30年間下がりつづけており、ついにG7で最低水準になった。給料のほうはぜんぜん上がらないもんね。なんであんな高いスマホ使ってるの、お金持ちなの、家庭内バブルなのと尋ねると、「えー、だってみんな使ってるしー」となんだかすごーくアタマの悪そうな答えが返ってきた。うーむ。
 
 ネットの対戦ゲームでなんとしても勝ちたいから、バイト代すべてつぎ込んで30万円のパソコンを買ったというのは、まあわかる。ネットの対戦ゲームの場合、パソコンの処理速度が勝敗を左右するので、グラフィックの処理が遅れるようでは勝ち目がない。なんとしても勝つために、処理速度の速い、あの真っ黒けでLEDのイルミネーションが光る巨大なタワー型の「オタクのパソコン」を買ったというのは、そこまでネットゲームにのめり込むことの是非はさておき、目的と手段が直結しているという点で、わかりやすい。なるほど物量を投じてでも勝ちたかったのね、納得でありまする。かくいう私も25年前からタワー型のパソコンを中身を入れ替えながらずっと使っておりまする。光らないけど。
 
 一方、スマホの場合、そこまで処理速度が要求されることはほとんどない。16万円のiPhoneでできることは、たいてい3万円のアンドロイドでもできるし、3万円のアンドロイドでできないことは、たいてい16万円のiPhoneでもできない。たくさんのポリゴンを使った3Dゲームや複雑な統計処理と思考ルーチンの求められる本格的なシミュレーター、あるいは動画編集のような重い処理が求められる用途は、依然としてパソコンの領分だ。なので16万円のスマホを買っていったいなにに使ってるんだろうというもやもやした疑問はずっと残る。ちなみにたいていのパソコンゲーマーたちは、スマホのゲームのことをアタマもテクニックも必要としない底の浅い運ゲーのくせに課金ばかり要求すると見なしており、かなり見下している。彼らのつまらないゲームに対する罵倒の言葉は、「なんだよ、スマホゲーかよ」である。

 「Steam」は、そんなPCゲーム至上主義者の牙城であり、日々世界中から集い、真っ黒けなタワー型パソコンへの愛とスマホゲーへの毒と家庭用ゲーム機とのクロスプレイへの不満を吐き出している。(もっとも、PC勢の劣勢は明らかなので、牙城というより、最後の砦なのかも知れない)。

Welcome to Steam

 

 以前はMacユーザーの妙な選民意識が鼻についた。Macの蘊蓄を得意げに語る彼らは、カルティエやデュポンのライターをひけらかしている成金趣味の田舎者とかわらないように見えた。iPhoneがこれだけ普及したいまもアップル製品のユーザーであることに優越感をいだいている人ってまだいるんだろうか。それにしても、新型iPhone16万円、デザインがこじゃれているだけの用途のはっきりしないデジタルグッズをがまんすればハワイ2往復できるよ。

 

 生徒のひとりに回線契約と同時に1円でiPhoneを入手したというのがいた。ああ抱きあわせ販売。もしかして日本でiPhoneのシェア率がやたらと高いのはこの回線契約との抱きあわせ販売のせいかもしれない。でも、それ、転売やらなんやらで社会問題になって公取からケチつけられたよ、たぶん今後、規制されることになるよ、次に買い換えるときは16万円だよ、どうする、次もiPhoneにするのと尋ねると、「うーむ」と彼もうなっていた。