奨学金は学資ローンではない


ネットで「奨学金」「返済」をキーワードに検索したら、「借りたカネは返さねえとダメだろ」式の発言ばかりがずらっとヒットした。この「借りたものは返せ」っていうのは間違っちゃいないんだけどさ、でも、奨学金っていうのは学資ローンと違って、社会保障の一環として行われているものなんだよ、知ってる?誰もが等しく教育を受けられることは基本的人権で、奨学金はそのための公的支援のひとつとして行われているものなんだから、ふつうどこの国でもくれるものだ。だって、後で利子つけて返せじゃ、サラ金から借金してるのと変わらないじゃない。そういう意味で、そもそも貸し付け方式の奨学金という仕組み自体が、本来のあり方から外れるもので世界的にもかなり特殊な状況である。だから、外国人に日本の奨学金は返さなきゃならないんだと言うと驚かれる。「借りた金は返せ」を連呼している連中は、そのへんの「そもそも」を理解していないサルたちに見える。


調べてみたところ、日本以外に貸し付け方式の奨学金が存在するのは、アメリカのごく一部の奨学金制度だけ。アジアやアフリカの貧しい国でも奨学金は給付である。なので、百歩ゆずって「日本の奨学金は貸与だけど、サラ金業者とちがってあくまで教育を受ける権利の保障だから、返せるときに後輩への寄付のつもりで振り込んでね」というのならまだ納得できる。しかし、日本のようにやたらと取り立てが厳しくて、いくら事情を説明しても延滞金をがんがん加算させるというのでは、利潤を目的に民間業者が貸し付けをおこなう学資ローンとなんら変わらないじゃん。この状況は、育英会が学生支援機構に改変されてから、いっそうサラ金業者化がエスカレートしている。現状では、「奨学金」という商品名の学資ローンというところである。日本の常識はけっして世界の常識ではないのである。