ガングロ・ギャル


中間試験の採点をする。めんどくさいなあと思いつつ渋々やっているのでちっともはかどらない。こういうときに限って、地球の裏側でやっている野球の試合がやけに気になったり、ラスベガスの弁護士ドラマを見逃してはいけないような気がしたり、ペンギンがぐるぐる回ってるアニメが突如として傑作に思えたりするのだった。

今回の出題で気に入ってるのはガングロギャルを題材にしたこれ。生徒も職員も誰もほめてくれないが、わりとうまく書けたように思う。もっとも、システムにしたがってやっている定期試験とはいえ、うまくいかないときに文句を言われるだけの職場環境では、なかなか労働意欲は維持できないのである。浮世の渡世は辛うござんす。

 高度経済成長期と現在のライフスタイルの変化について、次の文章を読み、文中の〔 〕にあてはまる語句の組み合わせとして正しいものを下の選択欄から選びなさい。


 高度経済成長期の日本は社会全体が大きな村のような状況であり、人々は世代や性別を越えて同じ大衆文化を共有していた。若者と年長者が同じ流行歌を口ずさみ、プロ野球の人気チームや人気力士の活躍に一喜一憂する光景がしばしば見られた。大晦日の「NHK紅白歌合戦」のテレビ視聴率は、1963年には、81.4%にも達している。「巨人・大鵬・卵焼き」がこどもたちに人気だったのもこの頃である。
 地域社会における近所づきあいは、現在よりも〔 A 〕で、人目を気にする意識が社会規範であり、「そんなことしたら人から笑われるよ」というのがこどもをしかる際のきまり文句だった。そのため、人々には「人なみでありたい」という意識が強く、消費活動においても、隣人がテレビを購入すればわが家も、隣人がクルマを購入すればわが家もという横並びの現象が生じた。そうした中には、お隣がテレビを買ったのに、うちはお金がなくて買えないから、テレビもないのに見栄をはってアンテナだけを屋根にたてたという笑い話まで残っている。このような人なみでありたいという意識が、昭和30年代の「三種の神器」や昭和40年代の「新三種の神器」といった横並びの消費行動をもたらし、高度成長期の日本に「一億総中流化社会」と呼ばれる社会状況をつくりだした。この場合の「中流」は、ヨーロッパ社会における「ミドルクラス」とはまったく異なり、ある特定の社会階層のことではなく、人なみでありたいという願望がつくりだした幻想の中の平均的日本人像といえる。
 現在の日本社会では、様々な情報や商品があふれ、社会全体としては人々の好みは〔 B 〕している。そのため、高度成長期のころとは異なり、むしろ〔 C 〕なライフスタイルを求める傾向が強い。書店には様々な種類の雑誌がおかれ、人々の多様な好みに合わせて〔 D 〕された誌面づくりがおこなわれている。しかしその一方で、同じ価値観を共有する小集団内では、〔 E 〕がすすむ傾向にある。これは情報化社会が高度に発達したことで、マスメディアやインターネットを通じて、小集団内での価値の共有化がすすんでいるためである。近年、しばしば用いられるようになった「〜系」という言葉は、こうした価値を共有する小集団のことを表しており、外部の者にはきわめて奇妙に見える風俗や慣習であっても、その集団内では決まり事にそっておこなわれている。そこでの同調圧力は強く、互いに仲間同士のまなざしや評価は常に気にかけている。この傾向は自分のライフスタイルが確立していない〔 F 〕ほど強い。現在の日本社会には、こうした小集団が無数に存在し、それは閉じた小宇宙のように互いにすれ違いながら、好みや考え方の〔 G 〕を社会の中に生み出している。


1990年代末に流行した「ガングロ・ギャル」(画像はWikipediaより)
 真っ黒に日焼けした肌と隈取りのように目のまわりを白く塗ったメイクが特徴。彼女たちのファッションは、当時の日本社会の中で飛び抜けて奇抜で個性的だった。たいていのおとなたちは、町をゆくガングロ・ギャルの奇抜なファッションに顔をしかめたが、彼女たちはまったく気にしなかった。彼女たちにとって、仲間以外の存在は町の風景とかわらなかったからだ。しかしその一方で、彼女たちは仲間内での評価には敏感に反応した。彼女たちの奇抜な服装やメイクも仲間内の約束事にそってパターン化されたものであり、ひとりひとりの区別がつかないほどみなよく似ていた。その意味では、きわめて没個性的といえる。文中の「閉じた小宇宙」の典型的なケースである。

ア. A 密接  B 画一化  C 個性的  D 絶対化  E 多様化  F 中高年  G 分断
イ. A 疎遠  B 多様化  C 普遍的  D 細分化  E 画一化  F 若者   G 連続
ウ. A 密接  B 多様化  C 個性的  D 細分化  E 画一化  F 若者   G 分断
エ. A 疎遠  B 画一化  C 個性的  D 集団化  E 多様化  F 若者   G 分断
オ. A 密接  B 多様化  C 普遍的  D 相対化  E 画一化  F 中高年  G 連続