通販生活の原発国民投票CM


東京新聞11月27日のコラムで、原発の是非を問う国民投票を呼びかけるカタログハウスのテレビCMがテレビ朝日に放送を拒否されたことが紹介されている。

筆洗 2011年11月27日
 俳優の大滝秀治さんのナレーションが、とても味わい深く響く。<原発、いつ、やめるのか、それとも いつ、再開するのか。それを決めるのは、電力会社でも 役所でも 政治家でもなくて、私たち 国民一人一人。通販生活秋冬号の巻頭特集は、原発国民投票>▼声と字幕だけの短いテレビCMが今、話題になっている。「通販生活」を発刊しているカタログハウステレビ朝日の夜の番組で流そうとしたが、拒否され幻になったCMだ▼原発をこれからどうするのか。政府や官僚任せではなく国民投票をして決めよう−。そんな特集の記事を宣伝する「商品広告」とカタログハウス側は考えていた。どこかタブーに触れたのだろうか▼テレビ朝日側は「民放連の放送基準などに則(のっと)った当社の基準をもとに考査、判断している」と説明。個別のCMの判断については「お答えしておりません」という▼原発の是非を国民投票で決めようという市民運動が広がっている。ただ政治家の関心は鈍く、批判的な声すらある。そこには、理性的な判断は国民にできない、という蔑視が潜んでいるように思える▼原発稼働の是非を問う住民投票条例の制定を求める署名活動が、来月から東京都と大阪市で始まる。電力消費地の住民が自らの問題として受け止めようという思いから始まった。主権者が意思を示す第一歩に注目している。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2011112702000040.html


また、一連の経緯について、業界紙である「通販新聞」のこちらの記事で詳しく紹介されている。
http://www.tsuhanshinbun.com/archive/2011/12/post-1002.html


上記の記事によると、テレビ朝日が放送を拒否した理由は、テレビは原則として政治的な意見広告を扱わないことになっており、原発の是非を問う国民投票を呼びかけるカタログハウスの広告が政治的なメッセージと判断されたためだという。知らなかった、テレビがそんなに公正で中立なメディアだったなんて。「原子力発電は安全でクリーン」という電力会社の広告も、2005年の郵政民営化選挙のときの「聖域なき構造改革」の政府広報も、猛烈に政治的な意見広告だと思うんだけど、放送局の基準では政策推進のプロパガンダはOKということになるらしい。ずいぶんと不思議な公正中立である。本来、逆ではないのか。人々に選択権のある一私企業の意見広告については広く許容されるべきだし、そうではない政府広報地域独占の電力会社の政策推進広告についてはきびしく規制されなければならないはずである。私には、福島原発の大惨事があってもなお「原発はもうやめよう」という声を大手のメディアでほとんど聞かない状況こそ、ひどく不気味に見える。


一方、原発の是非をめぐる言論をめぐっては、いまだに右翼左翼のレッテル貼りがまかり通っている。しかし、いったん原発が大事故をおこせば政治思想に関わりなく誰もが被害を受けるし、自然エネルギーをどのように位置づけるかは今後の社会のあり方を大きく左右する。また、冷戦時代に米ソともに原発建設に積極的だったことからもあきらかなように、マルクス主義市場原理主義かなんてことは、原発の是非を論じるのにまったく関係ない事柄である。こうした問題を右翼左翼の二項対立でとらえようとする発想は本質的にずれているし、政治的スタンスについていくらレッテルを貼ったところで、なんら論証したことにはならない。彼らの頭の中身は19世紀のまま止まってるんだろうか。その発言は意図的に論点をすり替えて原発をめぐる議論を攪乱しようとしているのか、さもなくば自らの愚かさの表明でしかない。


放送されなかった「通販生活」2011年秋冬号の広告はYouTubeで見ることができる。
http://www.youtube.com/watch?v=-PHunKfcCP8