消費税の値上げ


学校はまたまた定期試験である。週フタコマしかない授業なのに、中間・期末ごとに試験があるので、もう試験ばかりやっているような感じである。試験の合間に授業をやっているというか、試験のついでに授業もやっているというか、そんな本末転倒な状況。今回の小論文のテーマは消費税の値上げと憲法9条の改正。小論文については、正解のある問題ではないので、毎回、あらかじめ試験一週間前に出題内容を公開して、生徒たちに考えておいてもらうようにしている。わずか60分間の試験時間でいきなりこんなややこしいテーマを論じろというのも無茶な話だし。消費税の値上げのほうはこんな出題。

【論述問題・消費税の値上げ】
 現在、消費税率を10%に値上げすることが議論されています。次のAとBの意見を参考にして、消費税率の引き上げについて、あなたの考えを述べなさい。


A  消費税を値上げすべきである。
 現在、日本では、国と地方自治体とをあわせて、900兆円もの借金を抱えている。これは国民ひとりあたり約700万円もの借金を背負っている計算になる。これほど巨額の借金を抱えたまま財政赤字を放置したら、近い将来、日本でもギリシアでおきたような財政破綻(はたん)がおきてしまうだろう。
 国の借金や地方自治体の借金は、国債・地方債という債権の形で発行され、満期になったら利子をつけて債権者に返さねばならない。現在、新たな借金をくり返すことで借金を返すというつなわたりがつづいており、国債の返済だけで国の予算の3分の1が消えていくという異常事態になっている。
 財政を健全化し、景気対策社会保障を充実させていくためには、税収を増やすことが不可欠である。大騒動で行われた「事業仕分け」でも、財政の無駄づかいが削減されたのはせいぜい1兆円程度にすぎない。また、たばこ税やガソリン税を値上げしても、900兆円という巨額の財政赤字には焼け石に水であり、財政を立てなおすためには、消費税を大幅に値上げするしかない状況である。
 また、所得税最高税率を値上げし、高額所得者に高い税率を課すことは、働く意欲を奪うことになってしまう。努力して仕事や事業で成功しても、所得の半分以上が所得税で持って行かれるようでは、成功した者があまりにも報われない。努力して社会的に成功した者が報われるためにも、税収は、所得税より消費税を重視していくべきである。もしも、年収が5億円あっても、その半分以上が所得税で持って行かれてしまうような社会では、一所懸命働いて成功しようとか、会社を作って事業を成功させようという意欲が失われてしまい、社会の活力がなくなってしまう。
 欧米各国でも、税収で消費税のウェイトを重くする傾向がすすんでおり、ほとんどの国で消費税は10%以上、北欧諸国などでは、20%もの税率になっている。巨額の借金を抱えている日本で、消費税率が5%というのは低すぎるのではないだろうか。財政の健全化のために、消費税の値上げを急ぐべきである。


B  消費税を値上げすべきではない。
 日本の社会保障は先進国中最低水準、人口比にしめる公務員数も先進国中最低であり、先進国の中でもっとも「小さな政府」である。それにもかかわらず、GDP比での予算規模は大きく、巨額の財政赤字を抱える事態になってしまった。その原因はムダな飛行場や道路を各地に建設するなど、公共事業・補助金事業がやたらに多く、国の予算の多くがそこへ消えていくからである。公共事業や補助金事業に予算が吸い込まれていくしくみを変えない限り、消費税を引き上げたところで根本的な解決にはならない。いまの状況で消費税を値上げしても、税金だけ高くなって、財政赤字を抱えたまま、社会保障は最低水準という状況がこの先も続くことになるだろう。
 消費税の最大の欠点は、裕福な人も貧しい人も同じ税率が課せられるために、低所得者の生活を圧迫することにある。月収100万円以上の高額所得者にとって、消費税が10%になったところで大した問題ではないが、月収10万円のアルバイト生活者や派遣労働者にとっては、それ以上生活費を切りつめるのは不可能であり、消費税値上げは生活を直撃する。そのため、消費税の値上げに賛成しているのは、おもに生活に余裕のある富裕層である。
 たしかに900兆円の借金は深刻だが、日本の国債の場合、ギリシャとは異なり、ほとんどが国内の投資家や金融機関によって購入されている。この点で、ギリシャ国債のようにその多くが外国の金融機関に購入され、国債の信用低下が財政破綻に直結する状況とは大きく異なっている。
 日本では小泉政権以来、財政赤字の抑制として社会保障を切りつめる政策をとってきた。その上さらに、消費税を値上げするというのでは、財政の失敗のしわ寄せをすべて低所得者にまわすことになってしまう。このような政府のやり方はあまりにも無責任である。
 財政の赤字が深刻だというのなら、まず、役所の無駄づかいをもっと切りつめるべきであり、それでも足りないのなら、所得税最高税率を値上げし、高額所得者にもっと課税するべきである。日本では、財政赤字が雪だるま式にふくらんでいるにもかかわらず、所得税最高税率は、この40年間で、75%から40%へ35%も引き下げられてきた。こうした金持ち優遇の税制が近年の「格差社会」を日本にもたらしたのである。すでに日本では、高額所得者は自らの努力で成功した人たちではなく、親から社会的地位や財産を受けついだ人たちばかりであり、社会階層の固定化が進んでいる。どのような家に生まれたかでこどもの将来が決まってしまう社会は、人間の可能性と尊厳を踏みにじるものではないだろうか。
 たしかに、欧米諸国の消費税は、10%以上の高い税率だが、これはそのぶん社会保障が充実していて、低所得者の生活を圧迫しないしくみがあるからである。ヨーロッパ諸国では、公立学校の学費や公立病院の医療費は、どこも無料であり、失業保障も充実している。こうした手厚い社会保障のない日本では、高額所得者にこそもっと課税し、所得の再分配をうながしていくべきである。

国の総予算:228兆7659億円 過去最大を更新
毎日新聞 2012年1月25日 2時30分
 財務省は24日、12年度予算案の一般会計と特別会計を合わせた国の総予算が11年度当初予算比8兆4904億円(3.9%)増の228兆7659億円になったと明らかにした。一般会計は同2.2%減の90兆3339億円と6年ぶりに減額したが、特会は震災復興事業や財投債の元利払い費などの経費が軒並み増加し、総予算は過去最大を更新した。
 内訳では、国債の元利払い費が前年度を3%上回る84兆6775億円。社会保障費は1%増の75兆8101億円で、両経費だけで全体の約7割を占める。震災復興経費としてインフラ投資や被災自治体へ財政支援したことで、公共事業費が4.7%増の6兆1811億円▽地方交付税等が5.3%増の19兆9317億円と膨らんだ。
 政府は、一般会計については国債費を除いて前年度以下に抑える大枠を定めているが、特会には目標がなく、歳出抑制は進んでいない。【坂井隆之】


基礎的財政収支:消費税10%でも赤字 内閣府が試算
毎日新聞 2012年1月23日 15時00分
 消費税率を15年10月に10%に引き上げても、政府が財政健全化の指標としている基礎的財政収支(国と地方の合計)が2020年度時点で9兆〜16兆円強の赤字になる見通しであることが23日、明らかになった。内閣府が24日に公表する予定の「経済財政の中長期試算」で示す。政府は財政健全化目標として20年度の基礎的財政収支の黒字化を掲げるが、それには、消費税換算でさらに最大7%程度の財源が必要になる計算だ。【赤間清広】
 基礎的財政収支の赤字を放置すれば、国や地方の債務残高が膨らみ、財政危機が深まる。このため、政府は財政再建に向けた第一歩として国内総生産(GDP)に対する基礎的財政収支の赤字の比率を15年度に10年度(6.4%)比で半減の3.2%にする目標を設定。さらに、20年度には黒字化することを目指している。
 しかし、内閣府の今回の試算では、20年度までの平均実質成長率を1%強とする「慎重シナリオ」では、「税と社会保障の一体改革」に基づき消費税率を15年10月に10%に引き上げても、15年度に17兆円弱の赤字(GDP比では3・3%程度)が残り、10年度比の赤字半減目標に届かない。ただ、消費増税の効果がフルに出る16年度は赤字幅がGDP比で3%程度まで改善する。
 しかし、消費税の10%への引き上げによる財政改善効果には限界もあり、20年度時点でも基礎的財政収支は16兆円台半ば(GDP比3%)の赤字が残る。
 一方、政府の新成長戦略の目標の2%を達成した「成長シナリオ」に基づく財政試算では、消費税10%を前提にした15年度時点の基礎的財政収支の赤字は約14兆円(GDP比で2.5%程度)となり半減目標を達成する。しかし、この場合も20年度時点では約9兆円(GDP比で1.5%程度)の赤字が残り、黒字化には消費税換算で4%近い財源が必要になる計算だ。

 ◇基礎的財政収支プライマリーバランス
 毎年度の予算で、過去の借金の返済に充てる国債費を除いた政策経費を、新たな国債発行(借金)に頼らず、税収や税外収入で賄えているかどうかを示す財政指標。収支が赤字の場合は、社会保障などの行政サービスを借金なしでは賄えないことを意味する。赤字が続けば国の借金残高がその分積み上がり、将来世代に負担を付け回すことになる。


消費増税案に反対57%、賛成34% 朝日新聞世論調査
朝日新聞 2012年1月14日22時57分
 野田内閣の改造を受けて朝日新聞社が13、14日に実施した全国緊急世論調査(電話)によると、野田佳彦首相が政権の最大の課題に掲げている消費増税の政府案について、賛成は34%で、反対の57%を大きく下回った。内閣支持率は29%(前回12月31%)と横ばいで、不支持率は47%(同43%)。改造による政権浮揚効果は見られなかった。
 政府は、消費税を2014年4月に8%、15年10月に10%へ引き上げる税と社会保障の一体改革の素案を6日に決めた。消費増税の具体的な案の賛否を聞くのは今回の調査が初めてだ。
 これまで消費増税に比較的理解のあった男性でも賛成は40%で、反対は52%にのぼった。女性は賛成28%、反対61%。首相の足元の民主支持層でも賛成、反対が46%で並んだ。
 消費増税の前提とされる国会議員の定数削減や公務員の人件費削減について、首相が削減を「できると思う」と答えた人は19%しかなく、「できないと思う」が67%を占めた。消費増税の際の景気については「大いに」「ある程度」を合わせて80%が「考慮する必要がある」と答えた。
 首相は増税法案を国会で成立させる前に「衆院を解散して総選挙を実施すべきだ」と答えたのは49%で、「その必要はない」の38%を上回った。しかし、民主支持層ではそれぞれ29%、64%と逆転している。
 内閣改造の目玉である岡田克也氏の副総理起用については「評価する」が50%で「評価しない」は33%。参院で問責決議を受けた2閣僚を退任させたことは「評価する」51%、「評価しない」28%だった。
 野田首相のこれからの仕事ぶりに「期待する」は「大いに」「ある程度」を合わせて43%。昨年11月の59%に比べ、大幅に減った。